2021年も残すところあと2週間ほどとなりました。
ワンプラスも師走の様相を呈してきており、床や窓を磨いたりするなど大掃除に取り掛かったり年賀状を作成し始めたり、バタバタとしてきました。
一方でご利用者さまのリハビリは全体的に順調に進捗しています。それぞれの状態に合わせてメニューを考案して、最善の効果が出るよう日々頑張っております。
そんな師走の忙しいお休みの日に、ある医学論文を見つけ少々考えてみました。
今日はそのことについてお話ししたいと思います。
課題志向型アプローチ
ここ数年、脳梗塞や脳出血後遺症へのリハビリとして「課題志向型アプローチ」というものが提唱されています。
課題志向型アプローチとは、作業療法のひとつのリハビリ方法で「ある課題について難易度を段階的に設定し、それを反復することにより脳の可塑性を促し機能回復を図る方法」と言われており、ワンプラスで行っている川平法(促通反復療法)が分類される「ニューロリハビリテーション」の中にも、この課題志向型アプローチを取り入れているものがあります。
【脳の可塑性】に着目したリハビリ法と考えれば、川平法(促通反復療法)も共通したところがあると思いますが、このリハビリ法にもやり方によってはその効果が左右されるということがあるのではないでしょうか。
今回参考にした論文とは
今回参考にした論文はこれです。興味があればどうぞ。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ana.24734
研究の概要:脳卒中発症後6ヶ月を経過し、上肢麻痺を呈した85名の成人脳卒中患者を、課題指向型練習の量、つまり課題の反復数で4つのグループに無作為に振り分けた。すべての対象者は、1セッション1時間、週に4日間、計8週間リハビリをおこない、それぞれ3200回、6400回、9600回、個人が可能である最大の反復、の4つに分け課題練習を実施した。
結果:練習後の回復は、どのグループにも表れたが、治療の効果は小さかった。慢性期脳卒中片麻痺患者の上肢麻痺に対する課題指向型練習の量的反応性の効果は確認できなかった。
この結果をどうとらえるか
もちろんこの研究結果だけをうのみにするのはどうかとは思いますが、私としてはとても興味深いものとなりました。
脳卒中患者に対し、個々のレベルでできる課題を設定し、繰り返してもらう。繰り返す回数によってグループ分けして、その後の効果を測定したところ、多少のばらつきはあったがどのグループも同じような結果になってしまった、と私は読み取りました。
川平法(促通反復療法)でも、同じ動作を50回とか100回とか連続して繰り返すのを基本としています。
一見して、手技を繰り返せば繰り返すほど回復につながる、という川平法(促通反復療法)の考え方とは相容れない研究結果が出ています。
さて、これをどう解釈すればよいのでしょうか?
練習は量だけではない
この医学論文について、深く読み込んだわけではないのであまり断定的なことは言えないのですが、やはり脳卒中リハビリについては「量だけではなく質が求められる」ということを強く感じました。この研究でどのような課題指向型訓練が行われていたのかは知ることが出来ませんが、おそらく「質よりも量」を重視した研究をされたのではないかと想像します。
川平法(促通反復療法)では、術者と患者が共通認識を持って運動を設定し、正しい命令と正しい動きを厳しく求めます。つまり「練習の質」を徹底的に追及するのです。そして量も求めます。「質の高い練習の量を求める」のですね。
私がお手伝いしている川平法の勉強会でも、参加者には必ず「むやみな(リハビリ)運動に効果はありません」と講義の最初の方で必ず伝えます。
それだけに、リハビリ効果を出すにはセラピストの熟練の技が求められるのです。
川平法が世に知られるようになってから10年ほどが経過しますが(NHKスペシャルで大々的に取り上げられたのが2011年)、その後大きく普及しているとは言い難い状態が続いていると思います(間違っていたらすみません)。
ただその原因の一つに、効果を上げるためにはセラピストの腕が求められるところにあるのではないかと思っています。セラピストの育成に時間がかかるという事でしょうか。
川平法(促通反復療法)の形だけのマネごとはすぐにできるとは思いますが、実際に動かない手足を動かせるようにするまでにはかなりの熟練が必要です。
また明日から「楽しくも厳しい」ワンプラスでの利用者さまとの格闘が待っています(笑)。決して慢心することなく川平法の基本に立ち返り、今年を締めくくりたいと思っています。
そんな私が運営するワンプラスは大阪府寝屋川市にあり、脳梗塞・脳出血後遺症に対し川平法(促通反復療法)をマンツーマンで行っているデイサービスです。
大阪周辺には、自費で出張リハビリも行っています。
https://oneplusreha.com/addaccess
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