川平法(促通反復療法)は、脳梗塞・脳出血後遺症で出た半身マヒの関節運動を再び起こすための効率のとても良いリハビリ法です。
これを我慢強く繰り返していくと、関節の動きに良い変化が現れてきます。
ただ、マヒには色々なタイプがあり、患者さんの自己流による運動では、厄介な共同運動や代償運動が強く出てしまったり、筋肉が弛緩していたり思った通りの運動を再現することが困難です。
そこで我々熟達したセラピストが運動を介助し、楽に運動が出来るようになるよう仕向けるのです。
今日はどのようにして関節運動を起こさせるのか、そのテクニックの概要をご説明します。
目的の運動を繰り返すのが川平法
脳卒中で動きの悪くなった関節をどのようにして動かすのか?これが川平法の重要なポイントだと思います。
傷ついてしまった脳のネットワークを再構築するためには、その関節運動を実際に起こして、何度も繰り返し、その成功体験をご自身に感じてもらい、脳に覚えさせる。
この繰り返しなんですね。
口で言うのはかなり簡単なのですが、これを実際にやるのがひと筋縄ではいかないのです。
単なるストレッチやマッサージでは動きが改善しないのです。一時的に関節の動く範囲を拡げたり、筋肉を柔らかくしたところで、それが利用者さまのADL回復につながるとは考えづらいでしょう。
マヒがある中で、キレイな運動を再現させる、そこに私たちの支援が必要なんですね。
川平法を駆使するセラピストがどのようなテクニックを使っているのかご説明します。
反射を使う
反射とは「動物の生理作用のうち、特定の刺激に対する反応として意識される事なく起こるものを指す。」と定義されています。
人の目にフッと息を吹きかけると、無意識のうちに瞼を閉じる、とか、熱いものに不意に触ってしまったら手を無意識のうちに引っ込めるとか。
つまり、外界の刺激から自分を守るためのシステムのようなものなんでしょうね。
これを川平法では存分に使います。
特に使うのは伸張反射と言われるものと、皮膚筋反射と言われるものです。
伸張反射とは、動かしたい関節の筋肉を素早く引っ張って、筋肉が無意識のうちに戻ろうとする反射のことです。これを上手く使って運動を再現させます。
90度に曲げた膝のお皿の下を叩くと膝がピンと伸びる、あれが代表的な伸張反射ですね。
もう一つの皮膚筋反射は、動かしたい筋肉を皮膚の上から叩いたり、こすったりして刺激を与える方法です。皮膚の上からでも刺激を与えられると、緩んだ筋肉が引き締まり、運動がしやすくなると言われています。
伸張反射の効用
我々が使う伸張反射は、川平法にとって重要なテクニックのひとつです。臨床で私も実感するのですが、起こしたい運動をスタートさせる時のとても良いスイッチになってくれます。
マヒのある方は、運動の開始させることが難しいと言われています。そのスタートを伸張反射でフォローしてあげるんです。
効果はてきめんです。運動のやり方に戸惑っている利用者さまに、ハッキリとその道筋を示してあげられる、というイメージです。
低周波治療器を使う
マヒが起こって、筋肉に緊張が少なく反応が薄い場合によく使うのですが、家庭用の低周波治療器です。
肩コリなどの人が、肩にパッドをつけて電気を流してマッサージ効果を得る、あの治療器です。
あれを使うと肩が勝手にピクピク動きますよね。これを目的の筋肉に貼って使います。
すると、自分の意思に加え、電気の力で関節を動かすことが可能になるわけです。
廉価でとても効果が期待できるアイテムですね。
電動マッサージ機を使う
これも肩こりなどを解消するための器械、電動マッサージ機です。細かな振動を目的の筋肉に当てることで、引き締めが期待できます。振動刺激がかなり強いので、この筋肉を使って運動しているんですよ、という情報を利用者さまに伝えやすいという効能も私は期待しています。
皮膚筋反射を徒手やマッサージ機で出す、というイメージですね。
まとめ
川平法は、運動を起こさせるためのテクニックが満載です。利用者さまと息を合わせて行うことでキレイな動作が実現するわけです。
これはなかなか一人ではできないでしょう。
川平先生は、一人でも行える川平法も提唱されていますが、細かな運動やバリエーションの多さで言えば、やはりパートナーとやるのが一番だと思います。
何度も何度も繰り返し、脳のネットワークを強化して、理想の動きに近づけていくわけですね。
私も研鑽を重ねて頑張っていきたいと思います。
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