ニューロリハビリ・川平法(促通反復療法)の基本的な考え方を。

川平法とは?

今回は、川平法(促通反復療法)の基本的な考え方のお話をしたいと思います。脳梗塞・脳出血により傷んだ脳の神経は、おいそれとは回復してくれません。適切なリハビリを施したとしても、腕や脚のマヒが残ってしまうことは十分に考えられます。さらに時間の経過とともに機能回復のチャンスは小さくなり続けると考えられており、要介護状態になる原因の上位になってしまうほど、罹患した方の生活は不自由になってしまいます。
でも、そこで諦めずに何とか回復の道はないのか?と研究が進んだ結果編み出されたのが川平法(促通反復療法)をはじめとする『ニューロリハビリテーション』といわれる新しいリハビリ法です。
CI療法やHANDS療法、BMIなどいくつかのニューロリハビリテーションが提唱されています。
私はその中でも、廉価で、介護保険を活用したリハビリ時間でも十分に効果が期待できる川平法(促通反復療法)を活用しています。

川平法(促通反復療法)はネットワークの再構築です

人間の脳は、考えられないくらいの複雑さで成り立っています。脳神経は、それぞれがその役割を果たし、複雑なネットワークを形成することで人間にしかできないような高度な身のこなしや思考を実現しているのです。この精密で複雑怪奇なシステムに一撃を加え、その機能を失わせてしまうのが脳卒中なのです。
今までは、一度壊された脳のネットワークは回復しないと言われていましたが、そこに挑戦したのが川平法です。脳のネットワークが再構築可能だということに川平先生が気づき、最適な再構築方法を導いたのが川平法(促通反復療法)なんですね。

脳梗塞・脳出血で、神経への栄養が断たれる

脳を含め神経細胞は、電気信号を隣の神経細胞に伝えるという特殊な性質を持っています。この電気信号で「腕を曲げろ」とか「呼吸をしろ」とか「ちょっとここで考えてみよう」などの脳からの命令を伝達しています。
神経細胞は、常に豊富な栄養や酸素の供給を受けることにより、健全に働くことが可能な細胞です。脳卒中に罹り、神経細胞への血管が詰まったり切れたりすると当然ながら栄養や酸素は断たれ、その神経細胞は死んでしまいます。今まで機能していたネットワークの一部が壊れてしまうわけです。細胞は一般的に、分裂して同じような細胞を作る機能がありますが、神経細胞はその機能がないので、一度壊れてしまうと、再生はしないということなのです。

発症後6ヶ月はボーナス期間?

では、発症後に入院して懸命のリハビリで機能が回復することは普通に考えられることなのですが、あの現象な何なのでしょうか?神経は再生しないんだから、動かなかった腕が動くようになったり、会話が出来なかった人が出来るようになったりするのは、どうやって説明するのでしょうか?というわけですよね。
その理由ですが、脳のネットワークは、柔軟にその形を変形させることが可能なんですね。つまりネットワークを変化させる能力を持っているんです。これを私は「可塑性」などと理解しております。柔軟な変化が発症後6ヶ月間は活発に行われ、失われた機能を他が補完することが頻発するわけです。この性質のおかげで、失ったと思われた機能を再獲得できる、というわけなのです。ただし、変化が活発である期間には限りがあり、6ヶ月を過ぎてしまうとその活動はおとなしくなってしまうのだそうです。

6ヶ月を過ぎても!

6ヶ月を経過すると活発度が落ちるといわれるネットワークの構築ですが、見方を変えると「活発度が落ちるだけで、ゼロになってしまうわけではない」ということも言えるわけです。おとなしくなってしまったネットワークの再構築の力を出来るだけ引き出して、その効果を最大限に上げるためのリハビリ法がニューロリハビリテーションだという事なんですね。
時間の経過とともに、諦めるしかなかった脳卒中後遺症に、ひと筋の光が差したといっても良いと思います。

川平法(促通反復療法)の出番です!

そう考えると、今すぐにでも川平法を始めて効果を出せば良いではないか?と思われがちですが、なかなかそうはいきません。手や足が思い通りに動かない人に「はい、腕を挙げてください」とお願いしても、不必要な場所に強い緊張が走り、お願いした動作が全く再現できない場合があります。また逆に、腕に全く力が入らず、運動の実現がほど遠い人もいらっしゃいます。このように、目的とした運動が再現できない人たちのために、その人がその運動をやりやすくするためのおぜん立てを我々セラピストが準備することが重要なんです。
患者さんが、腕を挙げるために様々な工夫を行います。まずは余計な力みを取ったり、意識の向け方を教えたり。人間が腕を挙げやすい肢位(腕や体の格好)に誘導したり、反射を使って運動のはじめをフォローしたり、意味のない緊張を下げるために道具を使ったり。ネットワークの柔軟性が低い状態の脳に運動を教えるには、周到な準備が必要なんですね。セラピストの腕の見せ所です。このあたりは、次回以降具体的な手法についてお話したいと思いますが、様々なテクニックが川平法には詰まっています。

まとめ

脳卒中発症後6ヶ月以上経過した、いわゆる慢性期の方を対象に、日々リハビリに取り組んでいますが、実感としては「決してあきらめてはいけない。もったいない」というのが素直な気持ちです。半分あきらめ顔で利用を開始した利用者さまが、いつの間にか熱心になり、変化を実感されている姿はよく見られます。
教科書的に載っている川平法の理論と、私が臨床で得る感触に少々の違いがあったりして迷ったり困ったりすることもあるのですが、自分なりに仮説を立てて取り組んでみて、成功すれば喜ぶし、上手くいかなければ先輩セラピストに相談して解決を図るなど、試行錯誤の面もあるのも事実です。
ワンプラスは利用者さまとぶつかりながら、相談しながら、がっかりしたり喜んだりしながら、一歩ずつ歩いてるデイサービスです。

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