歩行時の杖の考え方

脳卒中の研究

脳梗塞、脳出血を発症すると、一般的に半身にマヒが出現し、生活に大きな支障が出ます。
身の回りのことはおろか、移動にさえ不自由を感じることが多くなります。
発症後、比較的早い段階からリハビリを開始し、個人差はあるものの皆さん回復され、実生活に戻られます。
ワンプラスにはそのような経験をされた方が多く通われており、各々の目標に向かってリハビリに励まれております。
そんな当事者の方と接していると、歩くことについての話題になることが多いことに気づきました。
確かに出来るだけ介助を受けずに生活をするためには、移動について不自由がないことがとても重要です。
ワンプラスでも歩行練習には力を入れており、川平法をベースにした歩行練習を毎日のように繰り返しています。
当事者が歩く、といえば杖と装具はつきものです。ほとんどの方が杖と装具どちらかか両方を使用されています。
今日は、杖の使い方についてちょっとお話してみようかと思います。

川平先生の杖についての見解

私がワンプラスで主に行っているリハビリ法は川平法(促通反復療法)です。
鹿児島大学医学部の名誉教授である川平和美先生が開発された画期的なリハビリ法で、脳卒中発症後6か月を過ぎたいわゆる「維持期」といわれる時期を迎えられた方にも機能回復効果が望めます。
川平先生は、関節運動の回復だけではなく、日常生活動作の回復が最も重要だと考えておられ、歩行についてもかなりのこだわりを持っていらっしゃいます。
私が川平先生の講習会に訪れるたびに、歩行についてのお話を聞いています。
歩行の話になると自然と杖の話にまで行くのですが、川平先生は「杖なんてね、リズムをとるための道具ですよ。特に1点杖はね。あと、転ばないための支えの役目」とおっしゃいます。
実際に当事者の方の歩行を観察してみると、1点杖を使う方は、決して手にした杖に体重をかけたりして歩く方はいらっしゃいません。まれに、非マヒ側の脚のプッシュオフに合わせて強く押し込む方もいらっしゃいますが。
逆に杖に体重をかけるようにして頼る歩行は良くない、とも川平先生はおっしゃいます。そんな癖を持った方には杖の替わりに不安定な傘をつかせて歩行練習させると良い、とも。
非マヒ側荷重を意識することは基本としても、杖に頼ることはダメ、ということなんですね。
そんなある日、脳卒中患者の杖と歩行の関係についての研究論文を発見しましたので、ご紹介したいと思います。

こんな研究がありました

私が読んだ論文はこれです。興味があればどうぞ。
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/09638288.2020.1808088?journalCode=idre20
論文の要旨は以下の通りです。
脳卒中患者の杖と歩行の関係について、速度・歩幅・歩調・対称性などが改善されるのかどうか、12件の研究論文を解析して結論を導き出しました。
その結果
多数の論文で、杖歩行は杖なし歩行に比べ歩行速度が若干落ちた、と結論付けた。
むしろ2件の論文で、杖なし歩行の方が歩調は低下したが、歩幅は増加した、と結論付けた。
つまり、杖歩行が杖なし歩行に対して明らかな優位性は認められなかった、という事でした。

杖に頼らずに歩こう

なるほど。やはり杖には直接的な歩行の改善は望めないという事なんでしょうね。
ただ、杖は手すりなどのない椅子から立ち上がったりするときに便利だったりするのでねぇ。歩いている時に転びそうになるのも怖いし。杖を全くなくすという選択肢は現実的には難しいですよね。
でも、頼りすぎるのも良くない、ということですね。川平先生のおっしゃるとおり、杖は、歩行のリズム取り、バランスを崩した時の転倒防止装置、と考えるのが一番のようです。

明日からの一週間で、7月も終わりです。
ワンプラスの皆さんと一緒に、歩く練習をもう一度見直してみようかと思っています。

そんな私が運営するワンプラスは大阪府寝屋川市にあり、脳梗塞・脳出血後遺症に対し川平法(促通反復療法)をマンツーマンで行っているデイサービスです。
大阪周辺には、自費で出張リハビリも行っています。
https://oneplusreha.com/addaccess

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